札幌市・双子山「山麓の洞門と双庭の間」

札幌の一級建築士事務所GLA代表の高野現太氏とは長年の付き合いがあり、過去に勤めていた会社に彼が入社してきた頃の光景が今でも思い出されます。独立後、住宅デザインを中心に店舗デザイン、インテリアや家具のデザインなど幅広く手掛け、農林水産省林野庁「ウッドデザイン賞 2020 」や日本建築家協会北海道支部「建築大賞2019審査委員賞」をはじめ数々の賞を獲得するなど、目覚ましい活躍ぶりは称賛の念に堪えません。
この度、彼が札幌・双子山にて手掛けた作品を当社でご紹介することができるようになりましたので、ご興味のある方は是非ご検討いただき、ご連絡いただけると幸いです。

(株)さいとう商会  代表取締役 齊藤 克幸


「山麓の洞門と双庭の間」コンセプト

この住宅は山麓に位置し,雛壇状に形成された古い造成地にある.周囲三方を谷間のように塞がれた厳しい環境をも土地のテロワールとして捉え,建築は葡萄の蔓のように環境に順応しながら生長し,自由を得た.大地から切り離されたスラブを上空に浮かべ,新たな地平をこの土地に与えている.スラブの上にはスプリットした二つの箱が置かれ,居住空間は「街のテラス」と「森のテラス」の二つの庭に挟まれた構成をしている.一方,スラブ下は大きな洞門のようなトンネルを設け,通りからは敷地の奥まで見通すことができる.蔦で覆われた隣地擁壁は緑の壁として楽しむことができ,その場もまた静かな庭となっている.洞門の緩やかな坂道に導かれた玄関の先は薄暗く,天井のスリットからは柔らかに光が落ちている.自然光に絵画が浮かび上がり,美術館のような静かな空間が広がる.かすかな光を頼りに上層へ上ると,これまでの空間の質とは一転し,眩いばかりの光と美しい景色に包まれる.リビングは山麓を臨む「森のテラス」と連なり,三段上った反対のダイニングも「街のテラス」へと延びている.LとDKはワンルームでありながらも家具を介し,表裏一体として配されている.ダイニングテーブルを札幌の街並みに連なるかのように外へと貫通させるなど,眺望を含め外部との関係性を重視した山麓ならではの住宅となった。

一級建築士 高野現太氏より建築にあたり苦労した点などをお聞きしました

・前面道路や敷地内の傾斜の克服、また、隣地三方とのひな壇上の高低差による圧倒的な閉塞感。これらの逆境を打破し、スケールの大きなアプローチ/駐車空間(洞門)を獲得し、二階LDKとすることで、眩しい程の光と眺望に恵まれる住宅にすることができた。

・厳しい敷地条件の中、人工地盤としてフラットな床を空中に持ち上げ、その上に2つの箱が寄り添う形で置かれたようなデザインとした。ダイナミックながらも街並みに呼応するようにヴォリュームを細分化させた構成を実現するために構造計算における調整を幾度も繰り返した。また、スキップフロアの多用により空間の移り変わりに抑揚を与えたがこれも、構造計算上での難易度を上げている。アプローチ部分の洞門上の人工地盤は梁せい450㎜を2本並べたものを一組として、それらを多数配列させることにより成立させている。構造部材は全て120㎜角柱を基本としている。

・内部空間と外部空間(庭)のヴォリューム感の調整に注力した。
敷地自体が住宅であるという理念のもと、無駄なスペースを作らず極力すべての土地を使い切る。土砂災害特別警戒区域のレッドゾーンを避けて住宅は計画されたが、その部分を谷間のようにとらえ、プライベートな静かな庭としている。通りからもピロティ―(洞門)越しに望むことができ、街に緩く開いた形でもある。また、二階のLDKを挟む両側のテラスは、藻岩山の緑景を望む「森のテラス」、札幌市の街並みを見下ろす「街のテラス」と名付けられ、二階でありながら外部との連続性を大切にしている。

・素材としては、素朴なものを使いながらもラグジュアリーな雰囲気を醸すよう配した。ウォルナットの床暖房対応フロア材,滋味深いブルーのタイル、荒々しい木毛セメント板のグレー、床に呼応するラーチの天井。同時に照明計画にも注力し均質な灯りではなく、むらのあるような分布を考えることで、ゆったりとしたくつろぐ空間を演出している。また、家具や建具も全て優れた職人による特注品で、この住宅ならではの雰囲気づくりに寄与している。特にキッチンはこだわり抜いた技術と素材により構成されている。
空間全体を徹底した精緻なディテールにより紡ぎ出し、程よい緊張感のある上質な空間とした。

【価格】12,000万円
【間取り】3LDK
【築年月/建物面積】2021年11月(築約2年)/121.45m²
【土地面積】265.18m²
【所在地】北海道札幌市中央区双子山3丁目
アットホームのホームページで詳細情報を掲載しています

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